ブログユニコーン🦄

雑文と音楽と雑文です

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   8月12日、でんぱ組.incのUHHA! YAAA!! TOUR!!!の札幌公演に行ってきた。年明けに推しであるねむきゅんが卒業し、新体制になって初めてのツアー。この数年でメンバーは入れ替わり、でんぱ組も雰囲気が変わってきた。ファン層(というかオタク)も入れ変わっているだろうし、今のでんぱ組への期待と不安が入り混じった気持ちで今回挑んだが、結果から言うとやっぱりでんぱは最高だった。

 

 まずオタク側の話なんだけど、会場に入ってすぐに雰囲気が変わったなあと感じた。でんぱのライブは中高生くらいからおじさん、おばさんまで色んな人がいるのだけど、今回は特に若い男性が少ない。会場を見渡してもとにかく若い男がいない!いや、いるにはいるんだけど大人しい人が多いようで、以前よりは「活気」みたいなものは漂っていなかった(僕の周りがそうだっただけかもしれないし、札幌公演だけの事情かもしれないが…)。

 ミックス(イントロにかぶせるコール)も心なしか以前よりはさみしく感じたけど、それはここ数年で残ったオタクたちの年齢層が上がったこともあるのかもしれない。でんぱ組が全国的に知名度が上がった2013〜15年にファンになったとしてもすでに約5年経つし、5年も経てば人は老いる。生活環境も変わるだろうし、ライブに行けなくなったり、興味が薄れることもある。そうなるのも無理はないか。というかもともとでんぱのオタクはおじさん多めだったし(元気な人が多いけど)。そういう自分もライブで声を出す方では全くなく、むしろ感動して一人でひそひそと泣いていたりするので他人のことをとやかく言いたいわけではない。

 とにかく年齢や性別関係なく雑多な人がいた中で若い男だけ目につかなかったんだよな。むしろ20代くらいの若い女性は結構いた気がして、男女比はけっこう変わってるのかもしれない。もちろん「若い女性は活気がない」とか「みんなもっと声出せよ」とかそういうことは全く思っていない。ただ大学生くらいのチャラめな男たちが仲間を連れて「盛り上げまっせ~」言ってる集団がいたはずなんだよな。彼らはきっと別の場所へ行ってしまったのだろう。今はどこが勢いあるんだろうか。やっぱりWACK

 

  

 ライブは最新シングルである「いのちのよろこび」からスタートした。今回のツアーで最も大事な曲を1曲目に持ってきたことは「一発目しかないよな!」と納得しつつも驚いたが、この曲についてはとにかく音源の方の話をさせてください。話す人がいないので…。

 「いのちのよろこび」は今まで聴いたことないような不思議な塩梅の曲で「ヤバい」としか言い表せない。辛うじて理解できる範囲で語るならば、音像が最先端のつくりになっていてバチバチにカッコいいのがまずヤバい。左右は広げつつ前に出し、センターは音数を絞ってすっきりさせることで音像を立体的にして、ベース(含む低域)は倍音効かせて浮かせるっていう今時のサウンド。年明けのアルバムも今っぽい音にはなっていたけど、今作はそこから明らかに頭一つ飛び抜けていて、聴いていてとても嬉しい。あと最後の大サビ。ここのBPMの下がり具合が絶妙で泣いてしまう。「速くて情報が多くて過剰」という2010年代J-POPの代表であろうでんぱ組が、2019年の新曲では大サビでBPMを下げるということにとにかく感動するんだ。大サビでBPMくらい下がるよね、だってもう令和なんだし。

 

 ライブの話に戻すと、セトリは新体制になってからの新曲を積極的に組み込んでいて初めて見る曲が多く新鮮だった。初めてといえば、2016年にリリースされるもライブでやらず、アルバムにも収録されず影の薄い曲になってしまった「待ちぼうけ銀河ステーション」がセトリに入っていて驚いた。この曲は再生した瞬間に"渋谷フレーバー"が漂ってくる完全に「渋谷」な1曲なのだが、「いのちのよろこび」のビジュアルであの頃のギャル文化をリスペクトしているのでそこに引っ掛けて今回選ばれたのだろう。実際に舞台には「いのちのよろこび」のMVに登場するSHIBUYA109によく似た「108」のビルが映し出されていたりして、こういうことをちゃんとしてくれるでんぱ組が好きだ。

 「渋谷ということは…?」と期待していたら「強い気持ち・強い愛」(小沢健二のカバー)も終盤に披露。ツアーでやるのはかなり久々なはずだけど、元々人気曲なので会場はすごく盛り上がっていた。セトリをググってみたら今年のロッキンでもやっていたみたい。この曲は2番Aメロでねむきゅんがリフトされる振りがあったのだけど、そこがねもちゃんになっていてグッときた。

 振り付けで印象的だったのは「キラキラチューン」をまさかの喧嘩ver.でやっていたことだ。説明すると、この曲の振り付けには喧嘩ver.(立ち位置を間違えてメンバー同士がぶつかって気まずくなったり、もめて袖にはけたりする、最後は仲直り)と、喧嘩しないver.(みんなでわいわい踊って楽しいね~)の2つがあって、ここ何年かはずっと喧嘩していなかった。これは完全に予想外だった。喧嘩してるけどファンは皆歓喜。(Twitterで検索したところでは2015年の代々木体育館での公演ぶり?らしい)

 

・喧嘩ver.のライブ映像 (2012年…!)

  他にもファンの要望をもとに最近ライブでやっていない曲を聴けるリクエストコーナーでは「冬へと走り出すお!」をショートバージョンで披露。「WORLD WIDE DEMPA」の頃の曲は懐かしいね…。

 

 今回のツアーでは珍しくミディアムテンポな曲を続けて聞かせるようなゾーンもあれば、「持ち曲をBPM早い順にやっているのか?」と感じるほどアッパーな曲を連発するパートもあり、緩急どちらも混在した構成になっていた。象徴的だったのは公演の最後に歌われた、清竜人がそのままソロ名義で歌っていそうなピアノバラード「秋の葉の原っぱで」。でんぱのライブが湿っぽく終わること自体珍しいけど、最後のワンコーラスをマイクを通さず肉声で歌われたのは息をのむものがあった。ステージ中央に集まり、イヤモニを外し再び歌い出すまで無音の時間がたっぷりとられたのだけど、ホール全体が静まり返る様はやはり感極まる。無音は感情を増幅する効果がある。

 

 アンコールなしの全20曲。新しさも懐かしさも感じられる、とてもふり幅のある不思議な公演だった。毎回のことだけど、前半はずっと泣いていた。もう過去の話だけどでんぱ組とその音楽がなければ本当にどうにかなってしまいそうな時期があったりしたので、そうやって自分を生かしてくれた人たちにちゃんと「会いに行く」ことは精神上とても大きな意味がある。でんぱのライブに行くことはお墓参りみたいな感覚に近い。「あの頃のでんぱ組」でなくなっていても、会場は同窓会のような温かい空気で包まれていてとても居心地が良かった。もし来年もツアーで来てくれるのなら必ず行きたい。同窓会には行ったことないけど。

 

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